今日は以前のエントリ(自殺や事故に対して管理者がまず出すべき2つのメッセージ | deathhacks)を revise して書こうと思う。
組織の従業員などが自殺や事故でなくなったときには、管理者、経営者ももちろん衝撃を受けるだろうし大変苦しむはずだ。
そして、組織の運営者の責任や期待される言動は、こうした惨事直後には理論的にも倫理的にも高まる。
管理者が、亡くなった従業員以外の皆に、まず初めに、いつ、どのような発言をするか、コミュニケートするかということは極めて重要だ。
私は過去にも、今現在も、こうした状況の管理者らに向けて、発言の内容や注意点などについてコンサルティング・アドバイザリーをしてきている。
今回書くことはそのエッセンスだ。
言うべきこと3つ、してはいけないこと3つ、そして若干のコメントでまとめている。
平時からコミュニケーションや人心、そして人事の感覚を研ぎ澄ましている管理者であれば、これを読むだけで対応の骨子はつかめると思う。
言うべきこと(1) 「私(管理者)自身がショックを受けている」
管理者自身が衝撃を受けているということを隠す必要はない。
むしろデメリットが多い。
別にうろたえたり、取り乱したり、感情のコントロールを全放棄して涙することなどを奨めているわけではない。
ただ、鉄の意思で冷静を保ち装うことを過剰に自分に課すことはないということだ。
管理者があまりに平静を保つと、それを見た周囲は、安心する面もあるが、一方で「冷たいのではないか」「自分たちも取り乱してはいけないかな」というあまり好ましくない印象が伝わる可能性がある。
言うべきこと(2) 「このことをウヤムヤにはしない」
事実は事実として、管理者個人としても、組織としても、正当に扱い対応することを明確に宣言する。
わかっていることは表現に注意しながら情報提供する。
このとき慎重に、憶測や予断を挟むことを避ける。
そうした内容が入ってしまっていないかは主観的なチェックでは不十分だから、できるだけ周囲の幹部や専門家のサポートを受ける。
また、情報の提供は初期対応の時点から継続的にしていくことを約束すること、実践すること、方針を変えるときにも一々説明することなども従業員に伝えたほうが良い。
言うべきこと(3) 「皆(従業員・関係者)のことを気にかけて心配している」
従業員を集めて、管理者が話すべきことの最後は、直接従業員らへのメッセージだ。
「同じように驚いていると思う」
「亡くなった者との関係は色々だったと思うが、悲しい気持ち・寂しさはそれぞれあるのではないか」
「急過ぎて頭が真っ白だったり、うまく受け止められない感じがしている人もいるかもしれない」
その上で、組織として可能な限り業務上などの具体的な調整や配慮を準備して提示すること、内外の心理あるいは惨事対応の専門家などと連携をして、希望・必要とする従業員には使ってもらいたいということを繰り返して発信する。
してはいけないこと(1) 当事者・亡くなった者への非難
「死ぬくらいなら、その気もちをバネにしてもうひと頑張りすれば良かったのに…」
「なぜひとこと周り(や会社、家族など)に助けを求めてくれなかったのだろう」
などの発言は死者への攻撃と取られる。
こうした部分には管理者個人の価値観、自殺やメンタルヘルス、人事や従業員についてなど、普段考えていること、思っていることが素直すぎるほどに出てしまう。
そして、それが適切かどうか、従業員にとってどう感じるかということは十分考えた上で表現しなくてはいけない。
個人として思い発言する内容と、管理者としての立場でのあるべき内容も微妙に違ってくるから調整が必要になる。
してはいけないこと(2) 従業員・聞き手への要求
「皆は早まったことをしないで欲しい」
「悩みが何かあって困っているのだったら勇気を持って会社や家族に打ち明けて欲しい」
「命は大切にしよう」
これらは結局、話し手主観の願望・要求だ。
極端に言えば、自己防衛・保身の面が強く出たり、受け取られたりしてしまう。
知り合いの自殺などのように強い衝撃を受けている人らは、少なくとも一時的にはとても消耗・疲労していると考えていい。
そこに、何かしらの要望や約束を求められることは、どんなに親身な内容で良さそうなものであっても、これまた攻撃と感じたり、負担になる部分が多くなる可能性が高い。
してはいけないこと(3) 関係ない話はしてはいけない
身近な惨事にかこつけて、別の話をしてはいけない。
小ずるさが見えたり、人格・管理者適性を疑われかねない。
「亡くなった彼(彼女)の分も仕事に真摯に取り組んで行こう」
「世の中、もっと大変な人たちもいるじゃないか」
「実は、私は以前にも親友を自殺(事故)で亡くしている。そのときに私が思ったことは…」
余計な鼓舞や話題、思い出語りなどは、惨事や故人について思いを抱えていながら集められた人たちの内面にズカズカと入り込んで感情の処理などを邪魔するようなものだ。
まとめ
惨事に一つとして同じものはない。
惨事介入にこれが正解だというものはない。
しかし、心理や専門的な経験を背景にした、初動・対応の原則はある。
そして、現場や環境の違い、時々刻々と変化する状況に対応するには私らのような専門家のサポートも有効だろう。
2012-06-02 08:00
(追記)
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