カウンセリング教育のロールプレイ演習で受講生にクライアント役になってもらい教育者がカウンセラー役をやって見せることがあります。これはモデリングとも言われます。
カウンセリングは理論や知識よりも技術や実践が要素としては大きいので、いくら言葉や教材などを通して教えようとしても伝えにくい面があります。
そこで「百聞は一見にしかず」ということで、目の前でやって見せることは最適な教育方法の一つです。
しかしここで問題が出てくることがあります。
クライアント役の受講生が、本当に苦しくなってしまうようなテーマや完全にトラウマになっている出来事などを持ち出してきたときです。
実際の話を出すことはまったく構わないのですが、15〜20分間くらいにあらかじめ限定している前提の、他にも受講生がいる教育の場で、短時間で処理することが現実的でないテーマや出来事を出すことはその場の全ての人にとってリスクだとも言えます。
もちろん教育する側は、クライアント役がどんなテーマを出すかをある程度は確認してから始めますが、モデリングとは言ってもカウンセリングがどんな方向、どんな深さに進んでいくかは確実に予想することができません。
また、カウンセリングを学ぼうと来ている人には自分の過去の苦しかった思いやトラウマを癒すための手段として他人のカウンセリングをしようとしている人が多くいるという背景もあります。残念ながら他人のメンタルヘルスケアをしながら同時に自分のケアもしようという試みはまずうまくいきません。
こうした教育内での受講生の過剰な自己開示は当人や周囲の人にプチクライシスを与えるかもしれませんが不可抗力、必要悪のような側面があるわけです。
ただし別の見方をするとその教育の内容や講師、雰囲気、受講生同士のエンカウンターがうまくいっているということを示しているとも言えます。
半公開の場でも自分のテーマを出せるということはその場に心地良い、安心できる、信頼してもいいと思わせる人間関係があると感じたからかもしれません。
リアルで深い状態に入ってしまったモデリングは中途半端に終わらせることができなくなります。
15分で終わりますよ、と言っていても、そのクライアントのためや安全を考えると一区切り付くまで止められなくなります。
1時間以上延長せざるを得ないことも実際にあります。
あとは現実原則に合わせてバランスを取ったコントロールをするしかありません。
2010-06-09 8a.m.
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