柔道技の達人になるのは難しいが受身は誰でもうまくできるようになる。
うつのリハビリで鍛えるべきなのは身体の頑強さや抵抗力ではない。
次に起こる試練や日常のストレスから、以前の自分よりもうまくかわしたりダメージを減らしたり大怪我をしないようなコツや知恵を見つけて身につけることが目標だ。
ストレスや疲労でエネルギーを使い果たしてしまったのがうつになった原因だと理解するのは正しい。
もしそのような状態から回復したとして、また同じようにならないためにはどうしたらいいだろうか。
全快状態のエネルギーを増やすことを考えがちだが器には限界がある。
年齢を重ねると基礎体力も落ちる。
かと言って、うつで一番落ち込んだときから回復しようとしたときのように休んでばかりいるわけにもいかない。
死ぬかもしれないようなうつや疲労を避けることに専念して人生での新しい挑戦や楽しみを減らしたり諦めたりするのはもったいないし、そうする必要もない。
必要なのは知恵、ツールだ。
柔道の受身のように、投げられてもまた立ち上がれる準備をするのが生きるコツだ。
人生ではきれいな一本勝ちを決められることは少なく、皆何百回、何千回と投げらるものだ。
全勝や一度も投げられないということは目指せない。
うつは例えてみれば、人生という競技の中で、初めて激しく投げられ、相手が強大な達人で、しかも地面が固く、打ちどころが悪かったようなものだ。
投げられた人間の落ち度というよりは偶然や運の要素が大きい。
さらには体調が万全ならば大丈夫だったのに疲れが溜まっていたということが重なっていたりする。
そこから回復して向かう目標は、絶対に投げられないようなスーパー選手になることではなく、その人なりの受身を今後のために学ぶことだ。
受身を最初から鍛えておけば良かった、誰か教えてくれれば良かったのに、と思うかもしれない。
残念ながら、実際には先に投げられるという部分にだけ目が行く。
そしていざ技を受けてみてからでないと受身の意味や効果はわからないし実感できないものだ。
するとどうしたって本気で受身をあらかじめには学べない。
受身はつまり、自分の身体の状態を知り、経験的に危険を感じとり、ダメージを弱め、また立ち上がるためのコツだ。
まずは意識しながら、次には無意識にできるようになるのが理想だ。
ストレスや疲労、惨事からくる感情揺れに対処するための「こころの受身」は応用が効く。
うつのリハビリはその「こころの受身」を覚えるチャンスになる。
2011-11-29 10:00
コメント