自殺・事故後ポストベンション活動の紹介 その1
自殺・事故後ポストベンション活動の紹介 その2
自殺・事故後ポストベンション活動の紹介 その3
自殺や大きな事故の後に組織や個人が受ける衝撃や影響をケアするためのポストベンション活動について書いてきました。
今回は組織や管理者・責任者へのフィードバックについて書きます。
会社組織などから依頼を受けてポストベンション活動をする場合、活動中でも適宜組織の管理者や責任者から支援を受けたり、協力をお願いしたりする場面があります。
それと同じくポストベンションチームが得た情報や経験上から伝えられるアドバイスなどを組織にフィードバックしていきます。
もちろん、個人に対する面談のときにも可能な限りのケアや情報提供をしますが、最終的な締めとしては管理者・責任者に対して総括的な報告を行います。
そのときに注意することがいくつかあります。その一つについて。
報告のときに責任者の不安が強く、チームが去っていった後は基本的に自分たちだけで対応しなければいけないというプレッシャーを感じていることがよくあります。
当然我々チームもポストベンション活動後に追加で連絡を受けたり、アドバイスをする関係を続けることは可能なのですが、組織が日常の仕事の中でメンタルヘルス管理を今まで以上に注意していくのはそれまでに関心がなかった組織ほど大変なのは確かです。
責任者は、自殺や事故の根本的な原因が不確かなほど不安が強くなります。そしてたいていの場合それらの原因というものはどんなに調査をしても後から100%解明して完璧な対処をすることが難しいものです。
責任者は不安から様々な質問をしてきたり、安心材料となるような具体的対策をチームに求めてくる場合があります。
それに対してはチームとしても丁寧に答えますが、いたずらに時間がかかってしまう場合の多くでは、最終報告の成果がぼやけてしまう可能性があります。
チームとしても長の経験や力量にもよりますが、対策としてアレもあります、コレもあります、ああソレもやった方がいいですね、というような下手な鉄砲も数打ちゃあたる的に散漫なアドバイスの応酬に終始してしまうことは避けなくてはいけません。
このように決して適切とは言えない多くの助言の押し付け状態をもたらすものは、一つにはクライアントあるいはクライアント組織(の責任者)の強い不安なのですが、もう一つはポストベンションチーム側の不安です。
出来事についての情報収集や分析があまりうまくいかなかった、それぞれの個別面談で良い成果や印象を残せなかった、わかりやすい適切な今後の対策などを助言出来ていない気がするなどの不安をチーム自体が感じていると、アドバイスや対策の質の悪さをなんとか量で補おうという心理が生じます。
依頼組織や責任者の不安やプレッシャー、心理状態を理解・認識して、それに対応するのと同様に、チーム自身も自らの心理を常に観察しなければいけません。
活動の標準は3日間と短期間ですし、できることには明らかに限界があります。活動の中でチームの人員自体も疲労したり衝撃を受けることはまれではありません。
しかし、依頼を受けてプロとして活動するためには、できるだけ自らの心理的負債をもケアしつつ活動する、ケアもできないような状態であっても認識はしてチーム内で補助しあうなどの工夫が必要です。
フィードバックは意見・意思の表明でもあります。それは多すぎても少なすぎてもいけません。
テレビでの討論形式の番組などで、実は議論・討論が形式や見た目だけでいわゆるディベートになっていない、最終的に共同的な結論などをつくることに協力していないような状態がよくあります。
ひとり一人が一見すると議論のテーマについて考えているようには見えて、実際にそれは事実なのでしょうが、自分の言いたいこと、予め用意していた言いたかったことを何がなんでも番組内で全部言ってやろうとしているだけに思える人がどれほど多いでしょう。
ポストベンションでは、個人や組織、責任者に対してのすべてのフィードバックの場面において、単純にすべての材料や要素を機械的に渡して、あとに置いていくというものではなく、プロとして必要な内容を適切に料理して提供することを目指します。それは知り得たすべてではないかもしれません。
しかしそれが情報が多いばかりが良いことではないということを心理面からも検討している我々の姿勢であり強みでもあります。
2010-05-28 8a.m.
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