組織介入においては単純に守秘すればいいわけではない

SDIM1004

ある組織で事故や自殺が起きたとき、または災害に見舞われたときなどに、外部から惨事に対するメンタルサポートをチームとして提供するノウハウはまだ一般的なものはない。
チームサポートの存在自体がまだ一般的に知られていないということと、日本でその重要性や必要性が認識されたのが最近の十数年であるからだ。
具体的には阪神淡路大震災以降ということになる。

外部組織がチームとして介入サポートをする場合、そして教育や情報提供だけでなく、個人へのいわゆるカウンセリングをする場合に、「秘密」の取り扱いが一つのテーマになる。
旧来のカウンセリングの原則としては、たとえ組織が主導した場とは言っても、その組織所属の個人とカウンセリングで話した内容については秘匿することになる。
しかし、はじめに書いたように、この分野や活動はまだ過渡期であり、社会も常に変化してきている。
ある程度、型が決まってきているように思われることもあるカウンセリングと同じく、現場や個別ごとのアレンジや応用の範囲は広い。

何か重大な問題と状況を抱え、しかもそれが周囲に知らされていないようなクライアント個人と面接をした場合、その人の秘密(共有されるまでは秘密のままだ)やカウンセリング内容、フォローアップをどう扱えばいいだろうか。
介入を依頼した組織としても、とにかく色々な情報を欲しいという実状がある。

「面接で、ウチの社員はどんな様子でしたか?」とか「注意して観察しておいたほうがいい人はいませんでしたか?」とかいう質問を担当責任者からされたときに、「いや、カウンセリングで話した内容は守秘することになっていますから!」という古典的な応対は現在は難しいし、現実にそぐわない。
かといって、何でもかんでも組織と共有してしまうという風に簡単にはいかない。
バランスを取ることが必要になる。

「こんな問題を抱えている人がいました」とか「かなり疲労しているけれども表面的には出していない方がいました」というように概略だけを伝えるやり方もある。
ただし、具体的個人名がないまま、この内容だけを話すと、相当に理解があり、責任能力がある人が担当者でない場合に、単に心配事を増やしてしまうことにもなりうる。

困っている個人にも説明し、理解してもらった上で、組織に対しても説明して、この先協働していく方向に持っていくのが、一番理想的かもしれない。
しかし、個人が内心や秘密を守りたいという意思があれば(それがたとえ冷静で適切で論理的なものではまったくないとしても)それを貫く権利はある。
介入者がプロフェッショナルであっても、組織に管理責任があったとしても、押し付けることは難しいし、実際にはその問題の内容によって境界はあいまいで定型的に判断することはできない。

個人には内緒にしたまま、組織・担当・責任者には、情報を伝えるという手もなくはないが、もしもそのことが明るみに出た場合を考えるとリスク高い。

組織への介入については、これまでに学術的な議論や研究はされてきているが、日本で現状に即した情報は少ない。
これは、個人に対するカウンセリングや契約とはかなり違うということを認識しておかなくてはいけないということだ。
相手も組織で複数あるいは法人格(など)、サポート側もチームであったり能力が様々であったりする。
現場では、通常のカウンセリングやサポートと同じで延長線上にある部分と、そうではない部分をチームの全員が高いレベルで理解していなくてはいけない。

2011-08-28 09:00

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

コメント

タイトルとURLをコピーしました