カウンセリングの実技訓練の多くにおいて、ロールプレイあるいはモデリングと呼ばれる模擬のカウンセリングが、練習または実演として行われています。
カウンセリング訓練では、教育者と被教育者、あるいは被教育者同士で場面や悩みなどを設定し、ロールプレイつまり実際のカウンセリングのシミュレーションをします。それによってカウンセリングの進め方や表情などの作り方を学んだり、個々のクセに気付いたりすることができる有効な方法です。
通常、ロールプレイが終わった後に、教育者・指導者などがそのカウンセリングロールプレイについて良かった点や改善した方がいい点を指摘したり、他の被教育者から気付いた点や感想などを聞くなどします。
我々のグループでは2009年半ばから、そのカウンセリングロールプレイにある工夫を試みています。
それに「ライフライン式カウンセリングロールプレイ」と命名し、現在その特性や効果について検証しています。
今までのところ、同方式について、良い印象が得られていますし、大きな欠点は指摘できていないこともあり、今回、一つのアイデアとして紹介します。
※名前の「ライフライン式」はテレビ番組の「クイズミリオネア」で、挑戦者が回答に迷ったときに何種類かのヘルプが用意されている点が似ていることから付けました
【ライフライン式カウンセリングロールプレイ】
(1)およそ10分間、通常のロールプレイをする(時間については適宜)
(2)その後、カウンセラー役は以下のAからDまでの4つのうち1つを選ぶ
A アドバイス(Advise):指導者等から助言を受ける
B バトンタッチ(Baton-touch):指導者と交代(リレー)する
C コンティニュー(Continue):そのままロールプレイを続ける
D ディスクロージャー(Disclosure):その時点でのクライアントの気持ちを(部分的に)開示してもらう(カウンセリング内容がズレているとか、実はまだ隠していて言えない事があるなど)
(3)5〜10分間続けた後、指導者が判断して終わりにする。クライアント役、カウンセラー役、他の被教育者、指導者がそれぞれ振り返り(フィードバック)をする(※私たちは元々原則としてそのロールプレイ小グループの参加者《全員が》なにかしらのフィードバック発言をするようにしています)
「ライフライン式」の工夫は(2)の部分で、一連のカウンセリングの中に(スポーツのタイムアウトのように)転機のチャンスを明示的に入れるということ、ただしその裁量はカウンセラー役(通常は被教育者)に持たせていることです。
これによって以下のような効果があるのではないかと考えています。
・ロールプレイ中、または直後に軌道修正、やり直し、しきり直しのチャンスがある
ロールプレイ後に振り返りをしてフィードバックを受けても「わかりました。次はそれに気をつけます」と言うだけで、理解のみ、《わかったつもり》、で終わってしまう可能性に注目しました。せっかく改善点を認識できたのであればすぐにやってみる、やり直してみる方が訓練効果が高いのではないでしょうか。これまでも指導者の判断や被教育者の希望によって同様の「再挑戦」がされる場合はありましたが、それをシステム化、ルール化することに意味があります。また突発的な仕組みではないので時間計画への影響が計算できます。
・あくまで被教育者に選択をしてもらうのでその内容や結果について、被教育者はより受け入れやすいのではないか
指導者からアドバイスを一方的にするのと、形式としてはっきりと被教育者からアドバイスを求めているのとでは違う状況になるのではないでしょうか。教育・実技訓練の場であっても助言や指導・指摘にとても感情的に抵抗する人は少なくありません。
また、うまくいっていない、停滞してしまっているようなロールプレイを決めた時間まで頑張ってやり遂げさせることにこだわり過ぎない、という意味もあります。カウンセラー役が必要以上に苦しい気持ちや失敗感を持たないように調整するきっかけになります。
まだ試みを始めて数回ですので、グループ内でさらに「ライフライン式カウンセリングロールプレイ」について利点・欠点を検証したいと思います。
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2001-05-11 7a.m.
コメント
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