惨事ストレスケアにおいて、クライアントに話をさせた方が良いのか否かを判断するためには2つの要素を考慮するべきだ。
それは「惨事ストレスの強度」と「本人の想起・抽象化能力」である。
この2つが同時に高ければ高いほど、再体験によるダメージを増やすというデメリットが大きくなるため、積極的な介入ケアをすることは勧められない。
逆に、この2要素が同じように低い場合にはできるだけ、他人やカウンセラーなどに話したりすることで、体験の記憶のダウンサイジングを図り、体験を「教訓」や「思い出」に変換することを促す。
ケアのレベル・手段を今回は便宜上概ね3つに絞って考えると「何もしない(見守る)」、「想起させる(イメージなどとして思い出してもらう)」「話をしてもらう(話を聞く、いわゆるカウンセリング)」となる。
これを2つの要素の組み合わせに応じて、臨機応変に考慮しつつ、ケアの方針を決めていく。
話をすること(カウンセラーから見れば、話を聞くこと)がクライアントや患者、災害であれば被災者の癒しやケアになるのだという経験則や理論、各種研究はたくさんある。
しかし、それと同じくらい「いや、体験を聞いたりして思い出させることはさらなるトラウマやPTSDをもたらすから禁忌だ」という論も数多く存在する。
果たしてどちらが正しいのか。
きっと、どちらにも「一理ある」のだろうし、研究をしたとしても evidential に決着をつけるのは難しそうという印象を持っている。
何より、現場や災害が現実に目の前にあるのに、手を出していいのか、「我慢して」見守るだけにするべきなのかという判断のための材料を当事者や実践家は欲している。
2011-06-03 09:00
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