大学病院の教授先生様は入院患者の病名を知っている

大学病院の病棟に教授回診がやってきました。週に一度、教授以下医師たちが一緒にベッドサイドにきて入院患者の診察などをして治療方針等を確認・検討・説明するルーチンです。
そのとき、あるおばあちゃんは自分の番が終わって回診集団が病室から掃けた後に担当の若い医師にしゃべりかけました。
「いあー、さっきあたしに『大丈夫だから、手術頑張ろうねー』って言ってくれた人が教授先生ですかー。びっくりしました!初めて会ったのに私の病名を当てるんだもの。さすがえらい人はすごいもんだね」
担当医と婦長は苦笑してしまいます。

病院でひとつの専門科の長であれば病棟の患者すべてについて部下を通して掌握しているのは当然なのですが、それを知らなければこのような笑い話がうまれます。

カウンセラーには守秘義務というものがあります。カウンセリングを通して知りえた内容をみだりに他人に漏らしてはならないというルールです。ルールとは言ってもカウンセラーに国家資格はありませんし、カウンセリングは医療やその類似行為とはされていないので、守秘について法律で決まっていたり、それを破ることに罰則があるわけでもありません。
ただし、産業カウンセラー協会などの民間団体は通常、資格を与えた人が守るべき独自の倫理規定を決めており、その中で、クライアントの秘密を守らなくてはならないと定めています。

カウンセラーとして学び始めると守秘義務について必ず習うでしょう。それは倫理事項としての面もありますし、カウンセリングの効果をあげるという面もあります。
守秘義務について知ると、秘密を守ることとスーパービジョンや事例検討が矛盾するのではないかと混乱することがあります。
秘密は守らなくてはいけないから自分の手に負えないケースのときに上級者に助けを求めるとして、まずクライアントの同意を得なくてはいけないのかしら、と思うかもしれません。

しかしこれは医療における専門家同士の連携や情報共有と考えればいいのです。
医療において、自分が会ったこともない人、例えば上級医や医長、看護師などが自分の病状を知っていても違和感はないはずです。
むしろ現代医療ではチームを組まずに単独で医療をする状況の方が少ないでしょう。チームの中では情報共有が当たり前です。
医師や弁護士、公務に就く者には法律で決められた守秘義務がありますが、それらでも業務の中、身内で許される秘密の共有というものはあるわけです。

カウンセリングは普通、クライアントとカウンセラーが一対一でするものですし、個人の内心や、罪とか恥とかいうものをテーマとすることが多々あります。
そこに守秘義務というものは確かにあります。
閉鎖性、不透明性がときに議論になる医療や行政など以上にカウンセリングでは、秘密と透明性の関係について考慮しながら扱う必要があると言えます。

2010-04-08 8a.m.

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