メンタルヘルスでもダメージコントロールという考え方をする

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カウンセリングやショックな出来事からの回復では、劇的な成果は到底望めないことも多くあります。
そんなとき、カウンセラー・サポーターとしては、クライアントにとってその時点での被害を最小限にすることを考えます。
これはダメージコントロールという考え方です。

ダメージコントロールとは、元は戦闘などで損害を受けた艦船において、戦闘を継続しながら部分部分の破損などを一つ一つ完璧に修理しようとしても不可能であるし沈没してしまう確率が高くなるので、応急処置を突貫で可能な限りして「消極的にでも戦闘をできるだけ続ける」「沈没しないで戦闘海域になんとか留まるだけ」「沈没までの時間を稼いで乗組員を離脱させる」などの目標をはっきりさせて、最小限の手当をすることです。
非完璧主義な戦略と言えます。

また医療外科においても、特には救急外傷などの治療において、一度に完璧な修復をしようとしないで、まずは出血を完全に止まらないまでもコントロールするのみの手術をして集中治療室へ、全身状態が安定したら2回目以降の手術をしてまた全身状態を安定化させて、というように短時間・局所的な視点で治療の「やり過ぎ」「深追い」をしないというやり方が工夫されてきました。

カウンセリングでも、深い悩みや疲労を、医療や周囲の配慮を引き出して一気に完璧に、あわよくば以前よりも素晴らしい状態になってやろうというような目論見を無意識にしてしまうクライアント、そしてしてやろうとするカウンセラーがいます。
それが却って回復や改善の妨げになることは多いものです。
うつなどに至る過程で受けた傷や他罰的な視点が「自分は悪くないのだから、幸せに回復する権利がある、そのためには多少自分にも周りにも無茶をするべきだ」という考え方かもしれません。

自殺のようなショックな出来事が起きた集団においても「二度と自殺が起きてほしくない」という思いが強くなりすぎて「自殺が起きるべきではない」「続いたら自分たちの負けである」という過剰な思い込みが生じます。
もとから、一度失われてしまった生命は戻りませんし、身体の傷と一緒で気持ちや思考・心にも残ってしまう、致し方ない傷跡というものはあります。
それを否定してしまうことによる弊害が存在するのです。

勇気ある撤退、は言葉で言うほど現場では簡単ではありませんが、局所的・短時間でみて許せないような戦略でも、全体的・長期的にみて妥当なやり方を探す視点が多くの場面では必要です。
そして、その戦術・戦闘にあたるのは当事者ですが、視点やサポートとして供給するのはカウンセラーやメンタルヘルスの専門家という戦略家の仕事になります。

2010-10-30 08:00

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