いまだにホームズとレイのライフイベント評価表を使ったり、興味を持つ人は多い。
「いまだに」というのは原著論文が1967年に書かれたものであるからだ。
■Holmes and Rahe stress scale – Wikipedia, the free encyclopedia
■Holmes TH, Rahe RH (1967). “The Social Readjustment Rating Scale”. J Psychosom Res 11 (2): 213–8
その後、40年以上経って社会や価値観も変化したり、多様化したりしている。
あるライフイベントが個人や社会にどんな意味合いや衝撃を与えるかということについてそろそろあらためて考え、まとめ直しても良い頃合いのように思える。
また、なんといっても原著のサンプル数は394人に過ぎない。
そしてその中に東洋人は12人しか含まれていないということも、現代の日本のメンタルヘルス教育や分析に直接その結論や要旨のみを引用・活用するのは危うさを感じる。
日本のメンタルヘルスに関する著作の中での引用に関して。
多くの引用ではこのホームズ-レイのライフイベント評価表の点数が300点以上だった場合には次の1年間に50%以上の確率でメンタルヘルスに関連した不調をきたすと紹介している。
実は、上記原著論文にはこの部分の記述はない。
ここから先は私もまだ調べていないけれどもおそらく一つの根拠となる論文は1970年に発表されたMahanとRaheの論文のようだ。
■Rahe RH, Mahan JL, Arthur RJ (1970). “Prediction of near-future health change from subjects’ preceding life changes”. J Psychosom Res 14 (4): 401–6
未読だけれども斜め読みではこの「ライフイベント後に不調となることの予測」に関する論文で対象としたのは3隻に乗艦した約2800人の米国海軍兵および海兵隊員のようだ。
おそらく軍隊の協力があり、軍艦(?)乗船環境という一定期間同等の環境におかれた人間を対象にできるというメリットがあったのだろう。
しかし、これも一般的な社会や人間にその結果をそのまま当てはめて良いのかということを十分検討・議論するなり、キチンと結果の引用や利用についての科学的な限界を認識するのが専門家やメンタルヘルスを扱う者として適切な姿勢と思う。
日本では大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻教授の夏目誠らがホームズらのライフイベント評価表を独自にアレンジするなどして新たに対象を集めるなどして分析しているようだ。
■夏目誠 holmes – Google 検索
■http://www.osaka-shoin.ac.jp/univ/examination/departments/pdf/natume.pdf
2011-01-12 07:00

コメント
多湖輝「私はノイローゼに勝った」という新書に引用されておりました。