カウンセリングの訓練でロールプレイをすることはよくあります。
ロールプレイをした後にカウンセラー役、クライアント役、周囲の観察者、上級の指導者などがコメント、フィードバック(私たちは「振り返り」と呼んだりしています)をするのもごくフツーの話です。
しかし、その後さらに「再実践」まですることは様々な理由から少ないのではないでしょうか。
実はその部分に飛躍的に技術を改善するチャンスがあると思っています。
振り返りの中でカウンセラー役だった人は、言われたことを受けて「なるほどー」とか「それは気づきませんでした」などと殊勝な反応をします。
「次はそうしてみます」「今度やってみます」と言うときの「次」や「今度」とはいつでしょう。
そのときになって本当にうまくアドバイスを思い出せますか。
コメントやアドバイスの内容にもよりますが「もっとこんなうなずきをした方がいいよ」とか「要約のし方、まとめる方向はこうした方がいいんじゃないかな」というようなことであれば、『すぐにやってみる』のが一番訓練効果が高いのではないでしょうか。
それをいかにも十分理解して「いいこと聞いたなー」と学んだ《つもり》になり、それで終わりにしてしまう場面を見ることが多々あります。
例えば「うなずきが小さいねー」というアドバイスであれば、その場で実際にその人自身が十分に大きいと思う動作をしてみて「どうでしょうか。良くなりましたかね」と再実践、再フィードバックを繰り返せばいいのです。
この「ちょっとしたこと」「たいしたことない工夫」に思えることをし忘れている、重要性を知らない、認識していない人が多い。
このやり方の唯一にして最大の、現実的な障害は「時間の制約」です。
トレーニングする人全員に対して、すべての場面でこのレベルの細やかなフィードバック、試行錯誤をするとしたならば、たいてい時間がいくらあっても足りないでしょう。
それでもこの方法はカウンセリングをスポーツと同じように考えるとすれば、野球で狙ったところにボールが投げられなかったときに腕の振りや指の感覚を微修正してまた投げてみる、サッカーで思った通りのボールコントロールができなかったときに意識する身体の重心を変えてまたやってみる、というようなことを愚直に繰り返す、そして繰り返しただけできるようになり、それが自信や落ち着きになどにつながると思うのです。
すでに紹介している「ライフライン式ロールプレイ」のうち、特に「A:advice アドバイス」は今回書いたような、適切なタイミングでのフィードバックと修正を時間的制約をコントロールしながらできるようにするための工夫です。
実はそれがもっとも取り入れてみたかったアイデアというか、唯一のものだったのでした。
あとのB、C、Dの選択肢はエンターテイン性、ゲーム性を入れてみたいという遊び心からのものです。
2010-07-02 8a.m.
(参考エントリ)
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