予兆があったとしてもなかったとしても、会社や団体、学校などである日、同僚が出てこなくなった、そして家にもいない、そんな場合にメンタルヘルス的な視点で考えるとどんなことをした方がいいでしょうか。
もちろん家族と連携する必要もありますし、さらに警察の協力を検討する可能性も出てきます。
行方がわからなくなった当事者が無事に帰ってくるのが一番の目標になるでしょう。
しかし責任者や管理者、もしいれば同じ組織に所属しているカウンセラーなどのメンタルヘルス担当者は捜索や様々な手続き以外のことも考えるべきです。
身近な人がある期間またはそこから連続して永久にいなくなるという出来事が集団にもたらす影響についての知識を持っている人や組織は少ないでしょう。
いなくなった人がどんな形で見つかったとしても、周囲の人に様々な影響を与えて残します。
周囲の心理的な動揺はすぐに消えて元に戻るということは状況にもよりますが通常はありません。表面上だけはまず先に平常に徐々に戻っていくでしょうが時間が必要ですし、その速度には個人個人で差があります。
いなくなった人と直接に深い人間関係がなくても、元々メンタルヘルス状態が悪かった人はその出来事をきっかけにして急に調子を崩すことがあります。これはその人の状態を周囲の人や本人が認識しているかいないかに関わりません。
また、普段隠れていた人間関係や集団の中での問題が出てくることもよくあります。横の関係や上下関係、仕事上の不満などが突然に出てきた様に見えることもあります。しかし大抵は出来事が起きる以前からそういった関係や感情の芽があったということが多いものです。もちろん必ずしも悪い部分だけでなく良い部分が増幅し、例えば団結が高まるということもあり得ますが、危機管理として認識してケアしなくてはいけないのは悪いことの方であるのは明らかでしょう。
さてこうして考えると、知っている人がいなくなるということは、どんな見つかり方をするにしても、組織や集団に対して危機が起きているわけです。
幸いに無事発見されたとしてもメンタルヘルス的な視点から見た危機はすぐに消えてしまうということはありません。
管理者や関わるカウンセラー、メンタルヘルス担当者はむしろいなくなった人が見つかってから(状況にもよりますが)決して短くない期間、観察やケアなどが必要な状態が続くと考えた方がいいでしょう。
2010-06-02 7a.m.
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