うつが強くて自殺の危険もあるくらいのクライアントのカウンセリングをするとき、カウンセラーはクライアントとのやり取りの中に出てくる睡眠の悪化や食欲の変化、自責の念や無力感などについて、共感するため、理解したことを示すため、医療の利用を勧めるためなどの目的でうまく扱う必要があります。
そのためのコツやイメージを釣りにたとえて説明しましょう。
うつの人の症状を川や海で泳いでいる魚のようなものだと想像してみてください。
カウンセラーはそれをうまく釣り上げたいわけです。
クライアントが症状を隠したがったり、仕方のないことだと考えていたり、あるいは変化に気づいていなかったりすることはよくあります。症状という魚はまず見つけるのにコツが要ります。
そしてもし魚を見つけて、目の前に見えているからといって直接追いかけても逃げていくのです。
魚を獲るのに手で捕まえたり銛で突き刺したりすることはできないことではありませんが、かなり高度な技術や運などが必要です。
そこで、魚を直接に狙うというよりは釣り上げるというイメージを持ってみましょう。症状という「魚」がいそうな場所や深さに針を垂らしてみて魚がかかるのを待つのです。もちろんまったく見当外れの場所で釣り糸を垂らしていても魚が釣れる確率は上がりません。このとき、技術や知識、経験があればあるほど最初から魚がいそうな(症状がありそうな)ところを目指したり、だんだん微調整したり、別の場所に移動したりしていき、うまく釣ることができる可能性が高まります。
またせっかく魚が針とエサに食いついてくれたとしてもそれに気づかなかったり、うまく釣り上げるところまでいかずに逃がしてしまうこともあります。
それはカウンセリングで言えば、せっかくクライアントが発している苦しさのサインや症状に気づかなかったり、気づいたとしてもカウンセラーがクライアントに「ちゃんと分かったよ」という反応をしてあげなかったりすることと同じです。
そうすると長い時間話しても内容が深まりませんしクライアントは不安を抱えたままになってしまいます。カウンセラーがクライアントの味方になれないままなのです。
つまり、一般的にうつによくある症状(魚)を知っておく、症状がどんなところに出るか(釣り場選びのコツ)を知っておく、クライアントが症状を表現したときに気づく(針にかかったことに気づく)、症状をうまく理解して分かってあげそれをクライアントに伝える(魚を釣り上げる)などのいくつかの段階を意識して、訓練や実践をする必要があります。
2010-05-31 7a.m.
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