仕事、立ち居振る舞い、軍人動作、それらすべてに通じるもの

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何事も「一度にひとつのことだけをする」というのが重要な基本です。

「自分は一時期に3つの企画をつくっていた」とか「今現に5つのプロジェクトを同時にまわしている」という話は間違いではないのでしょうが、人間が本当にマルチタスクを実現しているかどうかはわかりません。最近の仕事術やライフハック系の風潮としては、世の中の仕事が成熟し複雑になってきているからこそ、シンプルなやり方や考え方を意識してモチベーションを保ち確実に成果を積み上げていくことを勧めていることが多いようです。
書類を作成するにしても、物を作るにしても、あるテーマについて考えるにしても、とっかえひっかえでは進展も達成感も得にくい場合があるでしょう。

軍隊は企業などあらゆる組織と比べられ参考にされます。
軍隊の仕事を分解していって一兵卒の動作にまで至ったとき、その基本精神はやはり「一度にひとつのことだけをせよ」というものになります。
例えば、新兵は入隊直後に、歩いたり走ったりしながらではなく、必ず立ち止まって直立し対象に正対してから敬礼するように叩き込まれます。
方向転換も動きの流れの中ですることは許されず、間に完璧な停止をすることを命じられます。
上官に呼ばれたときに何か作業をしていたとして、それから目や手を離さずに、返事だけすることなどありえません。
これらはそれまでの人生で無意識にやってきたことをあらためてひとつひとつ意識しながら確実に、ときにはその意味を考えなおすこともしながら、再学習していくことになるわけです。
最終的にはその小さな確実さの積み上げが軍隊の任務達成につながることを歴史が証明しているからこそ、この初期の軍人動作をしつけない軍隊は近代以降存在しません。

さて、実は立ち居ふるまいの美しさにも、この「一度にひとつの動き」という原理が当てはまります。男性か女性かにかかわらず、見ていて品を感じるような方はバタバタと複雑な動作をしていません。
カバンや書類をつかみ上げながら立ち上がったりせず、しっかりと立ち上がってから、必要なものに手を伸ばします。
ドアを開ける動作と通り抜ける動きの間にも「間」が感じられたりします。
映画「花のあと」で、江戸時代の障子戸の開け閉めから部屋の出入りをするまでの動作が実に細かく順序立てられていることが印象に残りましたが、現代の日本の日常にはなかなか残っていない文化となっています。
それらは単に「ゆっくり動いている」というわけではないのです。

これら「起居動作」「軍人動作」「仕事のやり方」それぞれの基本に通じていて、相互に真似をしたり参考にしたりすることが多くあります。
もちろん、世の中はすべて基本だけではなく、応用や例外が存在します。素人には継ぎ目や間合いなどに気づきようもない、素敵な音楽や複雑な踊り、プロアスリートのパフォーマンスなどは応用が到達し、さらなる上を目指す過程なのだと思います。

2010-04-18 7a.m.

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