カウンセリングの内容を次回以降にどの程度どのように反映するかについては正解はありません。
クライアント次第の部分も大きいし、カウンセラーの経験や技術、方針や流派にもよります。
國分康孝氏は著書でこのテーマに関連する内容を次のように述べています。
“
(リレーションの形成)
第三に、来談者の話の内容を記憶しておくことである。自分の話をこれほどまでに先生は覚えていてくれた、この先生はそれほど私に関心をもってくれているーこう受けとるからである。”
– 「カウンセリングの技法」誠信書房、1979、p133
なるほど、クライアントの話の内容を覚えておくことにはメリットがありそうです。
しかし、あまりに克明に記憶していてそれをクライアントに示したとしたら「いくら秘密を守ってくれるとは言っても全部知られて覚えられるのはちょっと怖いな」などのように感じさせてしまうかもしれません。
また、話を再現して利用することにこだわって、メモや記録を取り、事前やカウンセリング中に確認したらどうでしょうか。何か記録され研究され分析されているように感じさせてしまう可能性があるのではないでしょうか。
一方、意識して面談内容を覚えることはしないというカウンセラーもいます。私が師事する方の一人がそんな方針です。 その方が「覚えない」理由はいくつかあるようです。
クライアントを多数担当しているし、記憶にも自信がある訳でないからという理由もありますが、一つは先ほども挙げたようにあまりにしっかり話を覚えていてしまうとクライアントが余計な緊張をしてしまうということ。
もう一つは、「ごめん、ごめん、物覚えが悪くて。どこまで話したんでしたっけ」というようにあらためてクライアントに語ってもらうことによって自らが思考をまとめ直すことの効果を期待して。
やはりこのテーマは、クライアントとカウンセラー、そして社会との関係の中で考え、決め、実行するべきなのでしょう。標準的な取り決めやフォーマットにすることはできません。カウンセリングそのもののやり方や本質の中に含まれる要素です。
日本ではカウンセラーは国家資格がなく、欧米とは違い、技術や知識の基準、法的および倫理的な義務や責任は各種民間団体や個人に委ねられています。「カウンセリング内容を記憶、または記録する」ことは、その心理的効果に以外の観点からも考える必要があるテーマです。
2010-03-31 8a.m.
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