河合氏や國分氏の著書を読むとカウンセリングについて様々に考えさせられます。関連テーマの宝庫です。
また、疑問に思えることを度々(それが唯一絶対であるという押し付けなしに)単純明快に答えています。世に出ているカウンセリングの本の多くは建前や理想論、精神論ばかり書かれていると感じるものが多い気がします。経験や実践に基づいた「すごみ」を感じなかったり、無理な一般化しかできていなかったりするのです。
その点國分の本、たとえば「カウンセリングの技法」には(決して分厚い本ではないのに)初級者から中級者が感じたり悩んだりするテーマについて私個人の感覚としては「ほとんどすべて、完璧に」触れられていると思っています。河合の「カウンセリングの実際問題」では、理論や理想とメンタルヘルスの現場がいかに違うか、しかしその接点は確かにあるのだということや、実は滅多に役に立つ情報に出会うことがほとんどないカウンセラーの「訓練」や「スーパービジョン」について、キッチリと触れています。この2冊については30〜40年前に書かれた本であることにも驚きます。
さて一方、私が知る部分がごく一部だからのもあるはずですが、河合が主に関わってきたケースややり方では「自殺念慮を持つクライアント」や「惨事後の個人や集団」のケアが難しいと思われます。
この分野に関しては下園氏が日本あるいは世界全体を含めても、その経験や考察の深さ、一般体系化の先進度などからみても最高権威であると思われます。
自殺念慮を持つレベルのクライアントを様々な角度、広さ、深さで考えつくしています。
クライアント中心主義、あるいは人間成長促進型のカウンセリングの限界点を現場で見抜く、近年の日本で最も注目されるべきポイントに対処できるだけでなく的確な指導・助言までができる数少ない人の一人が下園です。
河合や國分、下園もは私から見て上下があるのでも対立するものでもありません。その理論はテーマやその時々によって補間的であったり融合するような印象があったりします。実際二人の著書を並べてみるとほとんど同じことを書いているのではないかと思える部分もあります。
ですから今後、継続して河合隼雄と下園壮太の思考や理論、著書を比べて考察することによって私自身の成長につながると考えています。
2010-06-06 8a.m.
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