守ってもらえないことによる彼女の無力感

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「(誰からも)守ってもらえない」という出来事でうつになったケースを紹介。
内容は脚色している。

ある会社の、就職して半年の女性がうつで出社できなくなった。
電話で顧客のクレームを対応したのがきっかけらしい。
その時期から電話を取る事自体が怖くなっただけでなく、社内での必要なコミュニケーションも極度に苦手になってしまい、体調もすぐないため医療や病休を利用することになった。

話を聞くと、就職活動で相当に苦労したこと、なんとか就職したあとも新人としての頑張りや生活の変化から、電話クレームのエピソードの頃は心身ともに疲労のピークだったようだ。
そこにややこしいクレームの対応をする状況になり、若干のミスも実際にあって対応そのものも不調な結果だったという。

しかし、彼女が言うには「確かにその電話や対応のミスは、ショックではあったけれども、もっとショックなことがあったんです」とのこと。

「私の説明が不十分で電話先のお客様が突然怒り始めてしまいました。実際のところはっきり言って理不尽なレベルの要望をされておりまして。うまくご理解いただくことができず、さらに受話器から聞こえる声が高ぶってきて。結局、途中から上司が引き継いでくれてその場はおさめていただき、後日も丁寧にその顧客をケアしていくことになりました」

「でも、一番のショックは上司に『すみませんでした』と謝ったらば、『お客さんの意見はともかく、君の対応や言葉の選び方もうまくなかった。もう少し注意してくれよ』と言われたことです」

思い出してもらっても、その上司は人柄がよくないわけでもなく、怖いとか苦手とかいうことも元々はなかったのだが、その言葉を聞いてからあとその日一日残りは半ば放心状態だったという。

彼女の場合、もちろん元々疲れが溜まっていたことだけでなく、新人という立場でまだまだ自信は持てず無力感が強い状態だった。
そこにクレーム対応という惨事的な出来事が降りかかり、さらには「(守ってくれると思っていたのに)守ってもらえなかった」という出来事が続いた。
この最後の「守ってもらえない」という部分の無力感、自分の価値が否定される感覚が大きな衝撃となり、その後の自然な立ち直りもうまくできずに勤務自体が難しくなってしまったのが彼女のケースだ。

周りから見れば、「確かに電話クレーム対応は大変だけどあそこまで落ち込まなくても……」という風に見えるし、本人もなぜうつになるほどショックを受けたのかよくわからない。
結果として、回復には時間がかかってしまった。
気持ちやきっかけの背景が不可解なままだと、一般的な休養や医療というサポートがメインになり、あとは本人の能力や状況のせいということにするしかできないからだ。

こうしたケースでは、通常のケアやサポートだけでなく、「どうしてそんなに落ち込んだのか」ということを少しでもわかっておくことが、回復のための良い薬にもなるし、以後の仕事や生活の上でも自信や安心を得るツールになる。
無力感の理解や深い理解と応用力はそのために必要だ。

2012-02-20 08:00

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