うつは治ると言えるための工夫

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クライアントから「私は(私のうつは)治るんでしょうか?」という質問をカウンセラーがされたときに「治りますよ」と即答できないことには二つの理由がある。

一つには、うつの回復に限らず、この世に「絶対」はないというしごく真っ当な理屈だ。
そう、この世に絶対はない。
「絶対に〇〇だ」などという発言をすると政治家でも小学生でも一定の確率でツッコミが入るくらい確かな真実だろう。
この部分は今回まあいいとしよう。

もう一つは、一つめと微妙な違いしかないように感じるかもしれないが、カウンセラーがクライアントと「絶対」治ると約束することに対して感じる怖れがその理由になる。
この恐怖も心情的に理解できるが下記のエントリでも書いたように、これを克服することは大きなメリットがあるし、プロが負うべきコストやリスクと言えるのではないかというのが私の考えだ。

うつは治ると言う | deathhacks

そう。うつは治る。
「絶対に治るとは言えない」というメッセージをクライアントに伝えることは、治ること、そのイメージをあまりにも過剰に否定してしまうからNGだ。

「治る」という怖さの克服方法

そうは言って、頭で理解しても、よく勉強をし、経験を積み、誠実なカウンセラーであればあるほど「絶対に治る」と言ったり聞いたりすることに強い抵抗や恐怖を感じるだろう。
もしも、「うつは治る」と言うことに十分なメリットを感じるのならば、実際にそうするための一つの手段は単純だ。
練習、反復に尽きる。

ロールプレイトレーニングのテーマとして設定すればいいのだ。
クライアント役は「こうしてお医者さんに行ったり、休職したり、カウンセリングを受けたりしていて、私のうつはこの先治るんでしょうか?」と尋ねる。
カウンセラー役はとにかく「治りますよ」と即答する。
基本的な取り決めはこれだけだがカウンセラーがシンプルに即答することだけは守る。
あとはそのまま続けていく。

このとき実践を考えれば、カウンセラーはその後の流れとして、絶対に治るであろう理由探しやエビデンスの提示や説明をガリガリとやる必要はないし適切でもない。
平常のカウンセリングと同じく、メッセージコントロールをしながら、良くなる方法や考え、ツールやサポートを一緒になって考えていけば良い。
また、一貫性がないのではないかと思うかもしれないが、「治るとは言ってもどれくらいの時間がかかるかははっきりわかりませんよ」とか「運や予想できないような出来事の影響も受けるかもしれないから十分に注意していこう」とか付け加えることは不誠実ではないと思う。
ビジネス的な文法でいけば、相手の言動に対して最初から「No!(無理だ)」と返すのではなく、とりあえずでも「Yes, but…(わかりました。わかりましたけれども……)」という受け答えをすることに似ている。

まとめ

  • 反射的に「治ります」と言うことをトレーニングしてみる。言えるようにさえ準備しておいて、現場で実際にそうするかは選べるようにしておく
  • 治ることの根拠や経験、事例などは、クライアントに保証をしてまず安心を伝えることとは別のものとして準備し続ける

2012-02-14 09:00

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