大事なものを外注してはいけない

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メンタルヘルスやカウンセリングなどの根拠となる研究やツールはまだまだ歴史が新しいものが多い。
もちろん、今現在も日々新しいもの、「より良い」ものが探されたり、開発されたり、現場で実証的に試みられたりしている。

しかし、どんなに良いとされているものでも、単一のものや、その有効性を保証するのが結局は自分でない他人である(その比率が高い)ものなどに傾倒するのにはリスクがある。

例えば、ある心理テストを物差し通りに使い続け、10年後や100年後に、その有効性が実はないだとか、さらには害悪があっただとかいうことが明らかになる可能性はありうる。

一つのプロトコルとして、構造化されたカウンセリングだとか、うつ復職プログラム、グループミーティング手法、判断基準などを利用していて、後でそれが「間違っ」ているとわかったのならば、その責任はどこにもっていくべきだろう。

人知には限界があるし、すべてを現場で仕事をする個人らに負わせることは適当ではないだろうし、何もできなくなってしまう。
しかし、可能な限り個人それぞれが身の丈にあったツールを使い、「場合によってはすべての責任を自分が負うのだ」というくらいの気概を持つことを期待してもおかしくはないと思う。

医療や医学で言えば、「最新の治療や診断が一番正しい治療や診断である」という事実がある。
人間そのものという複雑なしくみを持つ対象を、限られた技術や情報で扱っているため、10年や20年、短ければ数年単位でガラっとある病気の治療法が変わってしまったり、かつては正しいとされた診断が誤りであったり再編されたりするという過去は少なくない。

人の悩みやメンタルヘルスを扱う場合には、同じようなリスクはさらに増えることになる。
人間の悩みや幸せの基準、社会の構造やしくみ、様々な環境要素などが現代では加速度的に変化しているし、多様にもなっているからだ。

こうしたことを考えると、メンタルヘルス周辺の仕事をする場合には、

  • 目の前のクライアントに従う。クライアント・現場からスタートする
  • 自身の仕事の拠り所になるもの、ツールなどの自分がコントロールしている部分、他者がコントロールしている部分を知り、意識する
  • リスクをとり、それをクライアントとプロフェッショナルとしての自分で分割・共有する

などが必要になる。

2012-02-11 09:00

(関連エントリ)

うつ病診断技術のニュース性、技術と運用の二人三脚 | deathhacks
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