カウンセリングを初級者に教えるのに実技演習は必須です。
座学だけで「教えた」「教わった」「できる」ということはありえません。
しかし日本でのカウンセリングのように、公的資格が少なかったり、位置付けが定まっていなかったり、学術的な理論や研究が先行している状況では、頭だけを使った「お勉強」が中心になりがちです。
(2011-06-09 追記)
あとはいきなり現場で実践という段階になります。
しかし訓練や学習という面では守秘や密室性は有利にははたらきません。
(追記ここまで)
また、カウンセリングにおいて、成功と失敗の判定が困難かつあいまいであったり、密室性が高かったりするという性質や制約があることも議論を難しくします。
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教育では多くの場合、座学とグループワーク、そしてロールプレイを組み合わせています。
ロールプレイでの実習では3〜5人程度のグループに1ないし2名程度の指導員を付けます。
そのグループで被教育者同士がクライアント役とカウンセラー役を交代しながら5分から20分くらいのロールプレイを連続もしくはリレーしながらやっていきます。
この中では実践の現場に劣らず、様々な問題が生じます。
元より、できるだけ現場に近い状況や心理を体験し、考え、訓練していく場になりますから、問題は起こった方が良いとも考えられます。
起こってくる問題には以下のようなものがあります。
- ただの人生相談になってしまい、技術よりも内容とか「気持ちに寄り添う」だとかの次元の議論になってしまう
- 被教育者同士のフィードバックが、ピント外れのベタ褒めの応酬になる。あるいは逆に、深く傷つけ合い過ぎてしまう
- クライアント役が生のテーマを出してしまい、被教育者(初級者)では収拾が付かなくなる
- 被教育者の自己表現、カタルシス欲求が強過ぎて、フィードバックや振り返りの場が、愚痴や怒りばかりを出す状況になる
- 出したテーマが回収されないまま、しかも相手が初級者で、不全感を残してロールプレイや教育が終わってしまう
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従来、こうした教育・指導上のノウハウはOJTで身につけるもの、まずやってみてやっているうちに自然とできるようになるもの、と考えられてきましたが、体系化したり、暗黙知や経験知を形式知にしたりすることにより、「指導における初級者」の学び始め、キックオフ kick-off からうまくやっていくことが考えられる時代になってきています。
2010-10-08 07:00
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