下園壮太とイチローの相似

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カウンセリングにおける下園壮太氏のメッセージコントロールは画期的なパラダイムです。

フロイトを始めとする「精神分析」系のセラピーなどを第1期とすると、ただ「傾聴」すれば良いのだとしたロジャーズが第2期と言えます。

夢や自由連想から意識と無意識、超自我などの概念を説明してみせたことは一定の理解とトラブルへの対処を可能にしました。
専門家しか扱えない学問寄りのカウンセリング理論を、ロジャーズが現場での事実をゼロベースから考え直すことによって、ある程度明確に訓練可能な「傾聴」や基本要素としての「受容・共感・自己一致性」、そしてクライアント中心主義という柱的概念に育てました。

下園はメッセージコントロールという概念でクライアント中心主義をさらに推し進め、カウンセラーがクライアントの味方になってエネルギーの回復ができるまでの段階を明らかに説明したり、臨機応変なバランス感覚が必要であるというカウンセリングの「技術」を考案・実践しています。
これはカウンセリングの世界として新たに第3期が始まったと考えるべき変化と発展です。
それは型にはまるような「傾聴」という一定不変の言動とは一線を画すものですし、「受容」などの具現化・会得・実践が困難な理想論的なものでもありません。

野球の打者で言えば、とにかくバットの振りを鋭く力強く速くして、できるだけ自分に最適な間合いや形、タイミングを崩さず、ピッチャーが投げたボールを「呼び込んで」打つというやり方が、ロジャーズの「傾聴」と似ています。

野球での革命的変化はイチロー選手の打法です。
イチローは自分の型を守って崩さないというこだわり方ではなく、投球に合わせて臨機応変に対応してヒットやホームランを量産しています。
素人目で見て、あるいは旧来の理論を学び実践してきた人間やプロから見て、完全に身体が泳いでしまっているようだったり無茶なコースの球を強振しているようだったりしても、イチローにとっては「理論的」に来た球に対応しているだけであり、それが間違っていないことは結果が証明しています。

下園のメッセージコントロール理論は一見すると、あるいは実際に学ぼうとすると「言っていること、やらせることがいつも違うではないか」「なぜ正解を教えてくれないのか」と感じられるかもしれません。
しかしその背景には大きな変革を伴う理論があります。
前段階の理論や技術をしっかりと身につけた人間ほど、その理解や実践は難しいはずです。

2010-07-06 7a.m.

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