惨事対処カウンセリングでの紋切り型説明から卒業しよう

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惨事体験をしたクライアントとのカウンセリングにはポイントが3つある。

  1. メッセージコントロールをしながら、まずは事実と体験を丁寧に教えてもらい、その上で感情部分を拾い上げる
  2. 惨事に対するクライアントの反応(ASR、ASD、PTSR、PTSDなど)について解釈と説明をする
  3. 今後の見通しや回復の流れ、セルフでの対処ツールやサポート資源を伝える

今回はこの内、2番目の「クライアントの反応についての説明」の部分のコツを一つ書く。

まずは惨事やそれへの反応について理解しているのが大事だけれども

惨事後一般に現れることが多い反応_回避、侵入、過覚醒など_については有名にもなってきているし、学習の初歩段階で出てきていると思う。
はじめの段階でクライアントの体験の中に、これらがどういった形で出ているのか、あるいは出ていないのかなどについて、意識しながら話を聞く必要がある。
釣りで魚がいそうな、だいたいの場所の見当がついていなければ、目の前に泳いでいても見逃してしまうように、メッセージコントロールをしつつも当たりをつけていく。

説明は紋切り型のものでは足りない

せっかく体験を教えてもらう段階がうまくできていても、情報提供やクライアントの反応を一般化する段階で、急に堅苦しく説明調が強く出てしまう人がいる。
自分が学び、教わった、ASDやPTSDなどについて、教わったそのままに近いトーンや言葉で、まるで教室で授業をしているような感じでクライアントに話し始めてしまう。
これは「型」というものの誤った使い方だ。

惨事反応の知識はだいぶん一般にも知られるようになってきたけれども、それを学ぶのに便利な「型」と、現場で今まさに困っているクライアント支援するのに適当な「型」は違うのだ。
現場では常に調整・アレンジ・カスタマイズを工夫しなくてはいけない。

常にクライアント主導で動く

ここでお勧めするやり方の一つは、まずクライアントに今まさに困っていること、気になっていることを質問することから始めるというものだ。
これは質問ではあるが、もうすでに体験をあらかた聞いているのであればつまり、確認する、ということでしかない。

例えば、「自分にもっとできることがあったはずなのに逃げることしかできなかった。それを思うと安心して眠れない」というような話であれば、なぜそのようになるのかを、本能や自己防御として、あるいは別のケースや人が感じた事例などを利用して説明する。
現場のクライアントは惨事に対して人に現れる反応を体系的に、網羅して知りたい、勉強したいわけではない。
現場で必要とされるのはまずは自分の感覚に対応するピンポイントの理由や説明だ。

まとめ

「型」というものは、あるレベルまではカウンセラーがはらう労力を減らし、予想外のことが起きる確率やそれに対する不安を軽くする。
しかし、そうしてリスクを減らしたり省エネを求めることはツールであって目的ではない。
もちろん初級者であれば、定型的な質問をコンパクトに伝えられれば合格だ。
カウンセリング全体のメッセージコントロールがおかしくなければクライアントは安心を感じたり、次につながるようなきっかけを受け取ることができるだろう。
ただ、全体の流れを見る余裕が持てそうならば、今回書いたように、ポイントポイントで今目の前にいるクライアントに対してはどうするのが良いかという問いを繰り返しカウンセラーが自身に確認すると次の段階にレベルアップできると思う。

2012-01-30 12:00

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