最初の1回1時間はアドバイスを禁ずる

R4000028

年配者をカウンセラーにするときには「最初の1回1時間はクライアントの話を聞くだけにしましょう」と教えると良い。

定年後の再雇用などで組織をリタイヤした人を再活用するという動きは多い。
その経験を買われての相談受け業務、そしてカウンセラーとして人材を使えないかという発想につながる。

カウンセラーとしてのトレーニングというと歴史や理論、細かな技術の学習から始めることがほとんどだろう。
しかしこれらはカウンセラーとしての現場実践に優先かつ必須のものではない。

人生経験豊富な人材にカウンセリングをごく短時間で教えるためのコツは「はじめの1時間はアドバイスをしないように」してもらうことだ。
人間は経験や体験がすでにあれば、他人をそこに当てはめたり同じような言動を強制してしまいがちだ。

経験豊富な人間の強みは何か。
その経験そのものにももちろん価値はあるが、変化が速くて大きい現代の悩み相談に対処するためには、その経験そのものではなく、それらを背景としたまた別の答えが必要だ。
単純に早く助言をするよりも、まずは経験豊富な者が批判や叱責をしないで話を聞いてくれるということが発するメッセージや安心感をクライアントに与えると良い。

他人の話、特に悩みや愚痴を聞いて、その相手に問題を指摘したり変化を促したりしないというのは難しい。
それは重々承知しているから、ここでのコツとしては自分の意見を言ったり、アドバイスをしたりすることを「最初の1回1時間だけ」は制限する。

このやり方で2回目以降につながったクライアントに対して、やっとこ本格的に腰を据えて対応していくという割り切りをする。
これによってカウンセリングや相談にわざわざ来たクライアントが「傷つけられて」しまうことをある程度予防できる。

プラスしてのコツは、キチンとシステムを作ることだ。
キチンとしたシステムと言っても重厚長大なものではなく、できるだけ続けやすく簡単なものを工夫する。

フィードバックの仕組みが必要だ。
受けた相談全件について、必ず複数人での「ふりかえり」をする。
内容としては1件につき5分間で良い。
「ふりかえり」は報告ではない。
その場の記録を残す必要はない。
カウンセラーとクライアントの守秘義務・契約を侵さない、集団としての守秘の取り決めと合意の上に行う。

この仕組みを回すためには心理カウンセラーとしての経験と力のある者がメンターとしてふりかえりに参加する。
メンターはカウンセラーまたはクライアントの重大な危険についてのみ気を払えば良い。
カウンセラーの上司としてセッションの責任を負ったり管理したりする役割につく必要はない。
カウンセリング自体はあくまでカウンセラー個人がまず第一に管理するものだ。

ふりかえりをすることには目的が3つある。
セッションを他人に対して話すことで自然に、整理と考えなおしをすること。
特に、アドバイスをしない約束事にしている最初の1回のカウンセラー自身のストレスを軽くすること。
そして、これらを通じてカウンセラーがクライアント体験をすることだ。

最後の「クライアント体験」については、理想としては実際に相談を仕事として受ける以前にしておく方が良いのだが現実的にはOJTとしてふりかえりの中で育てる形式になる。
こうした方針と意味の上では、メンターはトータルの時間はそれほど取られないが高いレベルが求められる。

2011-10-25 08:00

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

コメント

タイトルとURLをコピーしました