介入前ミーティングは「売り込み」の場だ

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自殺や事故などが起きたとき、その組織から介入の打診があったとして、最初のミーティングは「セールス」の場だ。
正に「売り込み」のチャンスと考えていい。

「セールス」や「売り込み」という言葉を使ったので、何かこう、顧客・クライアントが本当は望んでいないモノを売りつけるような印象を持つかもしれないが、そのような旧いタイプの商いではない。
当然のことだが、売る側、買う側の両方にメリットがある話だ。

いまどきのセールスノウハウとしては常識だろうが、売り込みで重要なことは、商品の「長所」や「安さ」ではない。
その商品を買うことによって「いかに顧客の困ったことが解決するか」「どのように生活がすばらしいものに変わるか」といったことをプレゼンしなくてはいけない。

車のセールスで例えれば、売ることができる車種が「いかに楽に速く加速するか」「燃費が良いか」「デザインが格好良いか」「安いか」「色やオプションが多彩か」を得々と説明することばかりに注力するのは、単なる自分本位だ。
うまく「売り込む」には、その車を買うことにより「今の生活や人生がどのように良くなるか」をアピールする。
初めて車を買うのであれば、ドライブや買い物の楽しさをイメージしてもらう。
買い替えであれば、家族がさらに仲良く暮らせるきっかけになるような車を提案する。
顧客が本当に希望している生活を達成するために必要なアイテムが実は車では無かったら、積極的な売り込みを止めることすらあるかもしれない。
夫が一人でセールス対応をしているとして、彼に説明するべきなのは車の特徴だけではなく、妻へのアピールポイントや説得方法ということもある。

メンタルヘルス、とりわけクライシス(危機的状況)への介入をチームで組織的に効果的に行うには、まず顧客・クライアントの状況を知らなくてはいけない。
いわゆる「ヒアリング」が最初に必要だ。
もちろん、車とも同じで商品の「スペック」も説明する必要はあるし、それなしで誠実なビジネスはできない。
しかし、そのような「スペック」「特徴」「他者の商品と比べた利点(あるいは他社製品の悪口)」は決して第一優先事項ではないことを知ろう。

通常の個別カウンセリングで、カウンセラー側の理論や知識、アドバイスをシャワーのようにクライアントに最初から最後まで浴びせ続けてしまうようなチグハグをしないよう、状況や人数が違う場合にも参照・応用した方が良い。
先に、クライアントへ「今困っていることは何ですか?」と聞いてみよう。
この質問で、少なくとも「『クライアントが』何を今一番の問題だと思っているか」や「何が問題なのかすらよくわからない(くらいの状況だ)」ということなどがわかる。

2011-09-04 07:00

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